婚姻費用

婚姻費用

婚姻費用とは

法律上の婚姻関係が続いている間は、夫婦間の生活レベルを同程度に維持するため(これを「生活保持義務」といいます。)、夫婦が別居中、一方から他方に婚姻費用を支払う義務が生じます。
たとえ同居中であっても、生活費が渡されない場合は、婚姻費用を請求することができます。
この婚姻費用について、夫婦間で分担を求める権利を、婚姻費用分担請求権といいます。

婚姻費用と養育費との区別

婚姻費用と養育費とは区別して使用されています。
離婚するまでは婚姻費用、離婚後は養育費と区別しておくと分かりやすいです。
一般的に、婚姻費用の中には、養育費の他に夫婦の一方の生活費も含まれていますので、養育費よりは婚姻費用の方が高額になります。

婚姻費用の金額

婚姻費用の金額(月額)は、夫婦の合意があれば、それで決まります。合意に至らないときは、家庭裁判所の調停手続で話し合うことができます。そのためには、調停申立が必要になります。
夫婦双方の収入をベースにした婚姻費用の算定表が公表されていますので、それを参考に話し合うことになります。収入資料としては、給与明細書、源泉徴収票、課税証明書、確定申告書控えなどです。
但し、算定表による婚姻費用の金額には、例えば、月額8万円~10万円というように、一定の幅があります。
各家庭における個別的な事情から、この幅の範囲内で定めるのが基本ですが、例えば、子供が私立大学に進学するという場合には(相手方も了解していること)、多額の教育費がかかりますので、婚姻費用の増額はこの幅の範囲を超えることもあります。
調停手続でも婚姻費用について合意に至らないときは、審判手続に移行し、審判(決定)によって家庭裁判所が婚姻費用の金額を定めることになります。

婚姻費用の支払期間

始期(いつから支払義務が発生するか)

婚姻費用は、別居後、要扶養状態になり、相手方に対し請求したときから認められるのが実務上の扱いです。
調停手続では、別居後、調停申立を行った日の属する月(例えば、平成29年1月1日に別居して、翌2月15日に調停申立をした場合は、平成29年2月)分から婚姻費用の請求が認められることになります。
但し、上記の例で、平成29年1月20日に相手方に対し、婚姻費用の請求を行っていたことが証明できるとき(例えば、内容証明・配達証明郵便)は、平成29年1月分から請求することができます。
従って、婚姻費用が支払われないときは、できるだけ早期に婚姻費用を相手方に請求したことを示す資料を残しておくことが大切です。

終期(いつまで支払義務があるか)

婚姻費用は、夫婦関係の解消(すなわち、離婚)または別居の解消のときまで認められます。

支払方法等

婚姻費用は、毎月払かつ振込の方法によるのが、実務上、基本とされています。
当月分を当月払でも、翌月分を前月払でも、当事者が合意できれば、それで構いません。

婚姻費用の変更

婚姻費用が決まった後に、当初予見できなかった事情の変更があり、その事情が、既に決まった婚姻費用の定めのままにすると不相当であるという程度に至っている場合は、増額・減額などの変更が認められます。当事者間で婚姻費用の変更につき合意に至らないときは、ができないときは、調停申立を行い、調停手続の中で合意に至るか、あるいは、調停不成立となって審判手続により婚姻費用の変更(増減額)の決定が出されることになります。

弁護士からのアドバイス

婚姻費用の金額は、請求する側と支払う側との間で、開きがあることはしばしばです。このため、婚姻費用分担の目安となる算定表を活用して、実情に合わせて合意に至ることが大切になってきます。
特に、別居期間中に子供の教育環境にできるだけ悪影響のないように婚姻費用分担額が決められることを、父母双方に目指して欲しいところです。 婚姻費用分担額について審判がなされるときは、未払分の婚姻費用分担金は一括払の決定がなされることになりますので、この点、支払義務者は要注意です。決定が出されるまでは、自らが許容できる婚姻費用分担金を毎月支払っておく方がよいでしょう。

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